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2025.06.07 デザインの話

レベルの高いグラフィックについて考えてみる――Webデザインにおける表現の質と構造を言語化する試み

レベルの高いグラフィックについて考えてみる――Webデザインにおける表現の質と構造を言語化する試み

目次

  1. はじめに:グラフィックの「レベル」とは何か?

  2. Webデザインにおけるグラフィックデザインの位置づけ

  3. グラフィックのレベルを可視化するための視点

  4. 各レベルに該当する要素を言語化する

  5. レベルを上げるために必要なこと

  6. まとめ:グラフィック表現を構造的に捉えることの意義

 


 

はじめに:グラフィックの「レベル」とは何か?

デザインにおいて「レベルが高い」「完成度が高い」と評価されるグラフィックには、共通する構造的な美しさと意味の重層性があります。しかし、それを漠然とした印象ではなく、相対的・言語的に理解し、再現性ある基準として把握することは難しい作業です。本稿では、Webデザインにおけるグラフィック表現のレベルを可視化し、それぞれのレベルにおいて求められる要素を言語化しながら、その本質に迫ってみたいと思います。

 


 

Webデザインにおけるグラフィックデザインの位置づけ

Webデザインにおけるグラフィックとは、単なる装飾ではなく、情報設計、UI/UX、ブランディングの文脈と常に連動しています。つまり、見た目の美しさだけでなく、「誰に、どんな印象を、どう伝えるか」という目的に対して機能しているかどうかが問われる領域です。そのため、グラフィックの質は「表層」だけでなく、「構造」や「文脈性」によっても評価されます。この立体的な構造が、グラフィックの“レベル”を判断する軸になります。

 


 

グラフィックのレベルを可視化するための視点

グラフィックのレベルを整理するには、以下のような5つの視点をもとに段階を定義します。

  1. 視覚的調和(ビジュアルバランス)

  2. 情報伝達力(わかりやすさ)

  3. 意図の明確さ(コンセプト)

  4. 一貫性(スタイルガイドへの準拠)

  5. 独自性(新しさや個性)

これらの視点をもとに、グラフィックを5段階のレベルで分類し、それぞれの特徴を以下に言語化します。

 


 

各レベルに該当する要素を言語化する

レベル1:視覚の整理が不十分な状態

  • 情報が煩雑で、視線誘導がない

  • 色や文字の選定に一貫性がない

  • 誰のためのデザインかが不明確

  • UIとしても使いづらい

  • 装飾が目的化しており、意味が読み取れない

 

レベル2:基本的なルールに沿った整理がなされている

  • 色やフォントが整っている

  • 情報の階層が可視化されている

  • 配置にリズムがあり、視認性が上がっている

  • まだテンプレート的で、独自の意図が見えづらい

 

レベル3:目的に合わせた工夫が随所に見られる

  • コンセプトと表現が一致している

  • 適切な余白や視線の流れが設計されている

  • ブランドやユーザー像に合ったトーン設定がある

  • 制作物として一定の完成度があり、実務レベルに到達している

 

レベル4:一貫性と個性の両立が見られる

  • スタイルガイドに沿いつつも独自性を保っている

  • 表現に奥行きがあり、印象に残るビジュアル展開が可能

  • 「誰が見てもいい」と感じる普遍性と、狙った人に届く感情設計がある

  • コンテンツとデザインの関係が密接で、メッセージが強い

 

レベル5:概念や思想をデザインに落とし込めている状態

  • 見た目だけでなく、設計思想そのものが美しい

  • 言語・構造・ビジュアルが統合されて、独自の世界観を構築している

  • 表現がユーザーの記憶に残り、ブランドの「人格」として機能する

  • 説明がなくても価値が伝わる

 


 

レベルを上げるために必要なこと

グラフィックのレベルを高めるには、「技術」だけでなく「思考」が不可欠です。特にレベル3以降になると、操作や見た目の上手さだけでは到達できず、設計の背景や意図を深く考える力が必要です。そのためには、単にデザインを真似るのではなく、「なぜこの構成にしたのか」「どうしてこの色なのか」を一つひとつ分解して理解し、自分の言葉で語れることが大切です。また、他者と議論したり、第三者の視点を取り入れることで、自分の視覚表現に対する客観性も養われていきます。

 


 

まとめ:グラフィック表現を構造的に捉えることの意義

「レベルが高いグラフィック」とは、単に洗練された見た目を意味するのではなく、視覚、構造、情報、意図が統合されて機能している状態のことを指します。今回紹介した視点と段階は、デザイナー自身の成長を振り返る物差しとしても、チームでクオリティを共有する基準としても役立ちます。グラフィックを感覚だけで評価するのではなく、構造的に理解することで、より精度の高いアウトプットが可能になります。