目次

ポップアップは「売る場」から「魅せる場」へ
没入感を高める体験型デザインの進化
デジタル連携で広がるポップアップの可能性
サステナビリティと地域性を活かした空間設計
ブランドストーリーを空間で語る時代に

ポップアップは「売る場」から「魅せる場」へ

2025年のポップアップデザインは、従来の「期間限定ショップ」や「販促イベント」といった概念を超え、ブランドとの新たな接点を創出する体験装置として進化しています。消費者はただ物を買うのではなく、ブランドが持つ世界観や価値観に“共感する”ことを求めており、それに応える形でポップアップは「売る場」から「魅せる場」「感じる場」へと変わりつつあります。短期的な販売促進ではなく、長期的なブランド認知やファン育成を視野に入れたデザインが重視される傾向です。

没入感を高める体験型デザインの進化

近年のトレンドとして特に注目されるのが、没入型・体験型の空間演出です。2025年にはこれがさらに洗練され、インタラクティブな演出や五感に訴える要素を取り入れる事例が増えています。たとえば、映像・音響・香り・触感などを複合的に使い、来場者がブランドの世界に“入り込む”ような空間が展開されています。単なるフォトスポットではなく、来場者自身がコンテンツの一部となり、「体験そのものを持ち帰ってもらう」設計が重要視されています。特にZ世代やα世代をターゲットとするブランドでは、SNSシェアを前提とした視覚的訴求も欠かせません。

デジタル連携で広がるポップアップの可能性

2025年のポップアップでは、リアルとデジタルの融合がますます進んでいます。ARやMR、QRコードを活用した情報の重層化、スマートフォン連動によるシナリオ体験、イベントアプリとの連携など、来場後も継続的なエンゲージメントが可能になる仕組みが整っています。また、ポップアップ空間内で取得した顧客データを、WebサイトやECと統合し、パーソナライズドな接点を構築する取り組みも一般化しつつあります。もはやポップアップは“一過性の施策”ではなく、“継続的な顧客関係を設計する第一接点”と捉えられています。

サステナビリティと地域性を活かした空間設計

ポップアップの素材や構成要素にも新たな視点が求められています。2025年はサステナビリティ意識の高まりにより、環境配慮型の素材（リサイクルボード、バイオプラスチック、再生木材など）や、再利用可能な什器を用いた設計が主流になりつつあります。また、地域に根ざした素材や工芸を空間演出に活用する事例も増え、「ローカルらしさ」や「つくり手の物語」が消費者との接点となっています。ブランドとしての社会的スタンスや“背景への共感”が、購買や支持につながる時代の要請といえます。

ブランドストーリーを空間で語る時代に

ポップアップは今や、「商品を見せる」だけではなく「ブランドを語る」メディアとして機能しています。企業の理念、創業ストーリー、商品の開発背景、社会的課題への取り組みといった“目に見えにくい価値”を、視覚・空間・体験を通じて可視化する設計が求められています。特にD2Cブランドやスタートアップでは、初期接点としてのポップアップが重要であり、その表現力がそのままブランドイメージを形成します。空間そのものがコンテンツであり、ブランドの人格を体感できるメディア。それが2025年のポップアップデザインの本質といえるでしょう。